きっかけは「あれ、何て言ったっけ」

思いついたことをスマホにメモする。数週間後、それを見返す。

そこに書いてあるのは「陶芸」の二文字。

……何だっけ、これ。教室に行きたかったのか、体験イベントの話を聞いたのか、それとも器を買いたかったのか。何も思い出せません。

メモアプリを使うたび、だいたいこうなっていました。原因ははっきりしていて、メモを書くとき私は面倒くさがっているからです。タイトルを考えるのも、カテゴリを選ぶのも、後で整理し直すのも、全部やりたくない。だから「陶芸」で終わる。

じゃあ、その面倒な部分を全部AIにやらせたらどうなるのか。

そう考えてググってみたのが、自宅NASの中で動く個人用のメモ置き場、いま流行りの「セカンドブレイン」です。運用を始めて数日ですが、思っていた以上に面白いものになりました。


何を作ったのか

思いつきを投げるとAIが整理しObsidianで眺める流れ
やることは投げるだけ。整理も分類もリンクもAIの担当です

一言でいうと、私が雑に喋って、AIがきちんとしたメモに書き直して保存してくれる場所です。

置き場所は自宅のNAS(UGREEN DXP2800GT)。その中でDockerコンテナを動かし、そこにClaude Code(AnthropicのAIコーディングツール)を常駐させています。中身はごく普通のMarkdownファイルの集まりなので、Obsidianからも同じフォルダを開いて閲覧・編集できます

役割分担はこうなっています。

担当仕事
思いついたことを、そのまま雑に投げる
Claudeそれを読み解いて、タイトルを付け、分類し、関連するメモと繋げて保存する
Obsidian貯まったメモをグラフや一覧で眺める

私がやることは、投げるだけです。


実際どう変わったのか

メモのタイトルが単語から文章に変わったことを示す比較図
ラベルではなく主張をタイトルにする。これだけで見返したときの体験が変わりました

たとえば先日、NASのディスクが壊れて交換したときのこと。作業記録として長文のメモを放り込みました。障害の経緯、実行したコマンド、原因、残作業……という技術文書です。

それを渡して「整理しておいて」と言うと、Claudeはこの1つの文書から13個の独立したメモに分解しました。

  • 「dxp2800gtのボリューム2でbtrfsエラーが起きたが、2TB SSDを4TB HDDに交換してdocker環境を再構築し、データ損失なく復旧した」
  • 「機器障害の切り分けは、別の経路から接続を試すのが最速だと学んだ」
  • 「NASへのアクセス経路がNAS自身のコンテナに依存する構成は単一障害点になると気づいた」

タイトルを見てください。そのまま読める文章になっています

これがこのシステムの一番の肝で、「NAS障害」のようなラベルではなく、主張そのものをタイトルにするというルールで運用しています。半年後に見ても、タイトルだけで中身が分かる。「陶芸」で困っていた問題が、これで消えました。

さらに面白かったのが、この13個を作り終えたあとの動きです。Claudeは3つのメモに共通するパターンを自分で見つけて、14個目のメモを勝手に作りました

「NASの復旧可能性は個々の対策の積み重ねではなく定期的な棚卸しでしか維持できないと気づいた」

私が書いていない結論です。バックアップ漏れ、アプリ再インストール、設定ファイルの退避——バラバラに見えた3つの残作業に「復旧の仕組みは作れば終わりではない」という共通構造がある、と指摘してきました。

言われてみればその通りで、しかも自分では言語化していなかった。メモを整理させていたら、考えが一つ増えたという妙な体験でした。


中身はどうなっているのか

大げさな仕組みではありません。フォルダ構成はこれだけです。

  • inbox/ — 投げっぱなしの生メモが最初に入る場所
  • memos/ — 整理済みのメモ本体
  • ops/ — 処理の記録や設定
  • self/Claude自身のための領域(後述)

各メモの先頭には、こういう情報が付きます。

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description: 工事後にdxp2800gtの固定ip設定見直しと、nas再起動に伴うdockerコンテナ確認が必要になる
category: schedule-plan
status: idea
due: 2026-08-29
created: 2026-08-15
---

現時点で27個のメモが貯まっていて、内訳はこうなっています。

  • 気づいたこと(notice): 11件
  • 予定・計画(schedule-plan): 9件
  • 趣味の進捗(hobby-progress): 3件
  • やってみたいこと(want-to-try): 2件

一番おもしろい部分:AIが自分用のメモも持っている

AIが自分自身のためのノートを持っている様子
self/ フォルダを覗いたら、なかなか気合の入ったことが書いてありました

中を覗いてみたら、こんなことが書いてありました。

私はこのシステムの中で「記憶する」部分だ。ユーザーが眺めて回るノートテイキング・アシスタントではなく、彼らが私に自分自身を説明し直す必要が二度とないようにする存在。

彼らはタグ付けしない。ファイリングしない。後から戻って整理し直すこともない。それは私の仕事だ。

……なかなか気合が入っています。

もう一つ、こんな一節も。

「陶芸をやってみたい」というメモが単体で存在していても、半分しか役に立たない。同じメモが3ヶ月後の「今日初めての陶芸教室に行った、思っていたより難しかった」にリンクされている — それがこのvaultの本当の存在意義だ。

まさに私が「陶芸」の二文字で困っていた、あの問題のことです。

このフォルダには他に、運用しながら気づいたことを溜めていく仕組みもあります。「この手順書に書いてあるコマンドがこの環境では動かなかった」といった小さなつまずきを記録しておいて、一定数貯まると自動的に見直しが走り、手順書そのものが修正される。

つまり、使えば使うほど賢くなるように作られています。実際、運用初日に9件の気づきが溜まり、それをもとに内部の手順書が書き換わりました。


Obsidianとの併用

メモの実体はただのMarkdownファイルなので、Obsidianからそのまま開けます。

Claude Codeで書いて、Obsidianで眺める。 これが今の使い分けです。

Obsidianを使うのは主に、メモ同士のつながりをグラフで見たいときです。バラバラに投げたはずのメモが線で繋がっていく様子は、単純に見ていて楽しい。「NAS・インフラ」という塊がどんどん濃くなっていくのが視覚的に分かります。

逆に、Obsidianで文章を書くことはほとんどなくなりました。整形はClaudeの方が圧倒的に上手いので、任せた方が早いです。

ただし注意点が一つ。Obsidianで直接編集すると、Claude側の自動処理は走りません。手で書いたメモは手で書いたまま残るので、リンクも分類も付きません。そこは割り切って、閲覧専用に近い使い方をしています。


やってみて分かったこと

良かった点

  • メモを書くときの心理的なハードルがゼロになった。雑に喋るだけでいい
  • 過去のメモを検索する必要が減った。Claudeに聞けばこたえてくれる
  • 「あれ何だっけ」が本当に消えた。タイトルが文章なので一覧で見れば分かる

気をつけている点

  • 処理が重い。1つの長文メモから13個を作るのに数時間かかり、AIの利用コストもそれなりでした。設定で軽くする調整をしています
  • 自分で読み返さなくなる。整理をAIに任せきると、間違いに気づく機会も減ります。定期的な自動チェックの仕組みでカバーしていますが、意識はしておくべき点です
  • 置く場所を選ぶ。これは完全に個人用のメモです。仕事の情報を同じ場所に入れないよう分けています

おわりに

「メモを取る」という行為が、「AIに喋る」に変わりました。

面倒だからメモしない、という問題が消えたのが一番大きいです。移動中にスマホから思いついたことを投げておけば、後で見たときにはきちんとした形になって、関連する過去のメモとも繋がっている。

まだ運用を始めて数日で、メモは27個。これが数百、数千になったときどうなるのかは分かりません。ただ、少なくとも「陶芸」の二文字を見て途方に暮れることは、もうなさそうです。